東京画廊+BTAPは2月24日(土)より、李康昭展を開催致します。日本国内では24年ぶりの個展となる本展では、李の新作約8点を展示致します。
李康昭(Lee KangSo)は1943年、韓国・大邱で生まれました。1965年にソウル大学絵画科を卒業し、現在は京畿道安城を拠点に制作しています。1950年代の韓国では、戦後第一世代を中心にアンフォルメル運動が隆盛していました。その後続世代にあたる李は、1969年、ソウル中心の権威的画壇から離れ、圧政下の困難な状況で前衛グループ「新体制」を結成します。1974年には故郷の大邱で「大邱現代美術祭」を開催し、地方における実験美術の活性化に貢献しました。現在、「大邱現代美術祭」は若手作家が前衛的な作品を生み出す場として高く評価されています。パフォーマンスやインスタレーションなど前衛的な実験美術に集中した李の代表作は、1973年に明洞画廊で発表された《消滅;画廊の中のバー》です。古い居酒屋の家具を配置し、酒やつまみを提供するこのパフォーマンスにおいて、李は瞬間の生成と消滅を観客と共有することを試みました。
その後、絵画に関する研究を開始した李は、パフォーマンスのプロセスを伝統絵画の平面に実現することを目指します。キャンバスの糸を引き出したり、シルクスクリーン印刷を施したキャンバスを用いるなど、1970年代の媒体に関する実験を経て、80年代に入ると、美術教育で身につけた習慣的な筆使いから離れた新しい表現を模索しました。
1980年代後半から、李の関心は清らかで生き生きとした自然へと向かいます。1990年以降の作品には鴨や浮舟、鹿などの特徴的なモチーフが現れますが、李はそれらを対象として描写するのではなく、「筆画」と「気運」に従った表現へと昇華します。描写しようとする欲望を捨て、清澄な精神と柔軟な身体を用いて、淀みない筆遣いから生まれる世界には、韓国の「風流」思想が反映しています。李が目指すのは、西洋的な世界観を離れ、真実の直観と安息を観客と共有することであり、その作品は単に思想を伝達する手段ではなく、参加と対話のエネルギーが相互に作用する構造体となるのです。
李の活動と同時代の作品群は、『Only the Young: Experimental Art in Korea, 1960s–1970s』というタイトルの展覧会として、昨年5月に韓国国立現代美術館、8月にグッゲンハイムニューヨークを巡回しました。さらに今年2月にはUCLAのハマー美術館を巡回予定です。また、本年10月には李の大規模な回顧展が韓国国立現代美術館で予定されています。
3月8日(金)、16時より、来日中のアーティストを囲んでのレセプションを開催致します。是非とも皆様のご来場を心よりお待ち申し上げます。
WORKS
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- Title
- The Wind Blows 22026
- Year
- 2022
- Material
- Acrylic on canvas
- Size
- 130 x 162 cm
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- Title
- The Wind Blows-230945
- Year
- 2023
- Material
- Acrylic on canvas
- Size
- 162 x 130 cm
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- Title
- The Wind Blows-230946
- Year
- 2023
- Material
- Acrylic on canvas
- Size
- 162 x 130 cm
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- Title
- The Wind Blows-230207
- Year
- 2023
- Material
- Acrylic on canvas
- Size
- 162 x 130 cm
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- Title
- 淸明-221260
- Year
- 2022
- Material
- Acrylic on canvas
- Size
- 91 x 73 cm
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- Title
- 淸明-220914
- Year
- 2022
- Material
- Acrylic on canvas
- Size
- 80 x 100 cm
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- Title
- 淸明-21141
- Year
- 2021
- Material
- Acrylic on canvas
- Size
- 72.7 x 91 cm
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- Title
- The Wind Blows-230918
- Year
- 2023
- Material
- Acrylic on canvas
- Size
- 91 x 117 cm
李康昭
李康昭(Lee KangSo)は1943年、韓国・大邱で生まれました。1965年にソウル大学絵画科を卒業し、現在は京畿道安城を拠点に制作しています。1950年代の韓国では、戦後第一世代を中心にアンフォルメル運動が隆盛していました。その後続世代にあたる李は、1969年、ソウル中心の権威的画壇から離れ、圧政下の困難な状況で前衛グループ「新体制」を結成します。1974年には故郷の大邱で「大邱現代美術祭」を開催し、地方における実験美術の活性化に貢献しました。現在、「大邱現代美術祭」は若手作家が前衛的な作品を生み出す場として高く評価されています。パフォーマンスやインスタレーションなど前衛的な実験美術に集中した李の代表作は、1973年に明洞画廊で発表された《消滅;画廊の中のバー》です。古い居酒屋の家具を配置し、酒やつまみを提供するこのパフォーマンスにおいて、李は瞬間の生成と消滅を観客と共有することを試みました。
その後、絵画に関する研究を開始した李は、パフォーマンスのプロセスを伝統絵画の平面に実現することを目指します。キャンバスの糸を引き出したり、シルクスクリーン印刷を施したキャンバスを用いるなど、1970年代の媒体に関する実験を経て、80年代に入ると、美術教育で身につけた習慣的な筆使いから離れた新しい表現を模索しました。
1980年代後半から、李の関心は清らかで生き生きとした自然へと向かいます。1990年以降の作品には鴨や浮舟、鹿などの特徴的なモチーフが現れますが、李はそれらを対象として描写するのではなく、「筆画」と「気運」に従った表現へと昇華します。描写しようとする欲望を捨て、清澄な精神と柔軟な身体を用いて、淀みない筆遣いから生まれる世界には、韓国の「風流」思想が反映しています。李が目指すのは、西洋的な世界観を離れ、真実の直観と安息を観客と共有することであり、その作品は単に思想を伝達する手段ではなく、参加と対話のエネルギーが相互に作用する構造体となるのです。