Tokyo
吉田暁子 視/夜(しや)_意義黎明
2009/3/25–4/18
東京画廊 + BTAPは2009年3月25日(水)から4月18日(土)の間、吉田暁子個展 『視 / 夜(しや) _ 意義黎明』を開催いたします。
吉田暁子は「日本の絵画」の探求を一貫したテーマとして制作を続けています。中心点を持たず、各部分が独立しつつ空間総体を現出させるという日本独自の構成法は、琳派・狩野派にその優れた例を認めることができます。吉田の作品は、西洋の強い影響下に発展した日本の現代美術を問い直し、その独自の可能性を探るものです。
吉田は絵画やインスタレーションなどさまざまな形式を用いて、日本美術の過去と現在が交錯する視覚的イリュージョンを生み出します。漆や紗、和紙、顔料などの古典的な素材だけではなく、鏡や集光塩ビ素材などを使用し、視点から視点への移行によって構成されていく空間を立ち上げるのです。
昨今の日本のアートシーンは活況を呈していますが、日本の絵画表現の独自性はどこにあるかという深い探究は、まだ手付かずのままです。マンガやアニメなどに特徴的に見られる平面構成に日本の独自性を見るのは、既に一般化した立場と言えるでしょう。しかしそのような様相に単純化されることで、材料や空間設定など、日本美術の伝統が持つ幅広い表現は、置き去りにされているのが現状です。吉田暁子は日本の文化の複雑な構造をその素材にまで分け入って検討し、自らの表現を切り開くという困難な営みを粘り強く行っています。西洋と東洋が交錯する現代日本の難解な文脈を、華やかな視覚表現にまで昇華させる力量を持ったアーティストと言えるでしょう。
東京画廊 + BTAPでの2年ぶり3度目の個展となる本展では、これまで吉田が用いてきた紗・鏡に加え、家具や屏風を使った新作を発表いたします。江戸・明治時代に無名の職人によって作られた屏風に、吉田が顔料・金箔・漆など複数の素材で重ねて表面を彩り、時代を超えたコラボレーションを実現させます。これらを小作品と織り交ぜて展示し、それぞれの素材が放つ色彩を巧みに配しながらダイナミック且つ、華やかな和の空間を作り上げます。
東京画廊 + BTAPは東アジアの現代美術をその始まりから見つめてきました。吉田暁子の個性は、日本の伝統の隠れた水脈を掘り当て、新鮮な流れを今日のアートシーンに引き込む点で、その歴史の中でも際立ったものです。彼女の思考と創造の最先端が空間となって具体的に明かされる本展に、是非お越しください。