東京画廊+BTAPは 4月12日(土)より、前田常作展を開催致します。
前田常作は武蔵野美術学校西洋画科に学んだ後、フランス留学中に出会った批評家・ジェレンスキーからの言葉に強く影響を受け、その後長きにわたり曼荼羅をテーマにした作品を制作し、国際的な評価を得てきました。また、京都市立芸術大学教授、武蔵野美術大学学長などを歴任し、美術教育の分野でも大きな功績を残しています。本展では、渡仏中のものを含めた1950-60年代の作品を中心に、前田のユニークな世界を紹介します。
前田常作(1926〜2007)は、富山県生まれ。太平洋戦争末期に入隊し、空襲の惨状を目の当たりにします。そのような体験は、前田の創作にも大きく作用しました。1953年に大学卒業後、1955年には自由美術家協会に入会。1957年の第一回国際青年美術家展大賞受賞の奨学金で、翌年フランスへ渡ります。パリにおいて、 K・A・ジェレンスキーから作品を「マンダラのようだ」と評されたことをきっかけに、前田は曼荼羅に軸を置いた作品世界を展開しました。また、当時パリに拠点を置いた金昌烈(1929-2021)や朴栖甫(1931-2023)をはじめとする韓国人アーティストとも交流を行っています。
本展にて展示する《人間風景》シリーズは、ランベール画廊での個展(1959年)にも展示されたシリーズです。数年にわたってシリーズとして描かれた《人間風景》からは、前田の画風の変遷が見て取れます。画面に描かれた密集した幾何学模様は記号化された人間であり、輪になって連動する様子は、戦禍にあって立ち上がる人々の生命力を表現しているとも言われます。1962年から63年にかけて描かれた《人間誕生》シリーズは、娘の誕生に接して開始されたもので、異郷で父となる不安や喜びが制作の直接的動機となりました。それまでの作風とはうって変わり、白地の背景に流動的なタッチで描かれた、透明感に満ちた大胆な構成が特徴的です。これらのシリーズは油彩ではありながらも、面相筆や蒔絵筆を用いて描かれています。さらに薄墨を用いての描写にも取り組むなど独自の制作過程を貫いた前田は、国内外で高い評価を受けています。