東京画廊+BTAPでは、3月26日(土)より「朴栖甫」展を開催致します。
朴栖甫(Park Seo-Bo)は1931年、韓国の慶尚北道醴泉生まれ、1954年に弘益大学美術学部絵画科を卒業し、モノクロームの線画や韓紙の質感を活かした作風を発展させました。韓国現代美術の先駆的存在であり、単色画(Dansaekhwa)を代表する作家です。単色画の源流とされる『5つのヒンセク<白>:韓国五人の作家』展(1975年、東京画廊)に参加し、その後も弊ギャラリーで計6回の個展を開催してきました。本展では「後期描法」の15点にドローイング2点を加えて、17点の作品を展示致します。
朴の「描法」シリーズは、三つの手法に分けることができます。1960年代後半からの鉛筆の線画を描いた「前期描法」、韓紙を用い始めた80~90年代の「中期描法」、そして2000年以降の「後期描法」です。本展で展示される「後期描法」の作品は、「色描法」とも呼ばれるとおり、水を含んだ韓紙の上で反復される縦線の立体感と、鮮やかな色面が特徴的です。
「後期描法」は、2000年秋の個展に向けて来日した際の、磐梯山(福島県)訪問をきっかけに生まれました。山頂から見下ろす紅葉の風景は、風向きで刻々とその表情を変え、まるで「押し寄せてくる炎のようだった」と言います。自然の色彩に魅了された朴は、「後期描法」をスタートさせます。モノクロームの色面は自然との同化を示唆し、時代の変化を超えた慰めと労わりのメッセージを伝えています。
朴の作品の所蔵先として、東京都現代美術館、グッゲンハイム美術館(ニューヨーク)、グッゲンハイム・アブダビ(アラブ首長国連邦)、国立現代美術館(韓国)、M+(香港)があります。また、作家に関する文献に、Park Seo-Bo: from Avant-Garde to Ecriture (Kate Lim、Booksactually、シンガポール、 2014)、またPark Seo-Bo(Lee JinJoo、Rizzoil、ニューヨーク、2022年4月予定)があります。2021年には、韓国のアートシーンへの貢献が評価され、大韓民国金冠文化勲章を受勲致しました。今年4月にはヴェネチア・ビエンナーレでの同時開催企画展が予定され、また現在、出身地である慶尚北道醴泉で、朴の美術館の建設が進行中です。
本展の開催と合わせて、峯村敏明氏(美術評論家)とKate Lim氏(美術評論家)による評論文を掲載したカタログを9月に出版する予定です。皆様のご来場を心よりお待ち申し上げます。
WORKS
朴栖甫
朴栖甫(Park Seo-Bo)は1931年に韓国の慶尚北道、醴泉に生まれ、1954年に弘益大学美術学部絵画科を卒業後、1961年のパリ滞在を経て、モノクロームの線画や韓紙の質感を活かした作風を発展させました。韓国現代美術の先駆的存在であり、韓国単色画(Dansaekhwa)を代表する作家です。
朴は「エクリチュール」シリーズで最もよく知られています。1960年代後半に始められた「エクリチュール」シリーズは、道教や仏教の哲学や韓国の書道の伝統を起源とし、時間、空間、物質の概念と密接に結びついています。初期の作品では、まだ乾いていない単色の絵の具の表面に鉛筆の線画を描いていましたが、後期の作品では、韓国の伝統的な和紙である韓紙を重層的に用い、指や器具で表面に縦線を入れて幾何学的な起伏を作ります。こうして生まれる形態や色彩の限定性はミニマルアートを思わせるものですが、「描く」ことを通じて反復的行為を写し取ってゆくその作品は、西洋のコンセプチュアル・アートとは異なる経路を通じて、ある精神性へと至る試みと言えるでしょう。